空手道禅道会とは

理事長 

インタビュー

道場訓

一つ、我々は、武の修業を通じ、自然体の精神を涵養すること

一つ、我々は、長上を敬し、一切衆生を尊重すること

一つ、我々は、平和和合の志を重んじ、無なる闘争を行わざること

一つ、我々は、身心を錬磨し、文武両道を重んずること

一つ、我々は、拳禅一如を武道とし、生涯修業の道を全うすること


「誰でも強くなれる総合格闘技の稽古体系の確立こそ武道空手道の使命であり、21世紀の青少年の健全育成に真にできるもの」との思いから、特定非営利活動法人日本武道総合格闘技連盟と空手道禅道会を設立して20年近くの歳月が経ちました。その間にも格闘技界は激動の流れを見せ続け、総合格闘技やミックスドマーシャルアーツ(以下MMA)といったものが格闘技界において主流となり、今や世界各地でMMA大会が連日のように開催されるようになりました。

 

 そのMMAは初めから人類の意識の根底にある自然な欲求の格闘技です。安全性を考えて多少のルールを設けるのは、生物が同種で限度を超えて傷つけ合うことを嫌う本能を持っているからだと思います。MMAは様々な束縛の中で生きる現代人にとって、ほとんど束縛のない状態で闘う、最も自然な格闘技と言えるでしょう。そして、許される技術が多様に存在するため、各人の個性にあった闘い方やスタイルを確立することができ、技術的要素の比重が非常に高い競技なのです(このようなルールは体格差や条件の差を、技術によって克服してきた日本人向きのルールと言えます)

 

 青少年の健全育成を考えて見ましても、安全性を考慮した総合格闘技のルールで礼儀を重んじて稽古をすることは、人の痛みを知ることになるだけではなく、直接打撃を当てたり、組み合ったりすることで、他人との深いコミュニケーションをつくりあげることができます。陰湿ないじめや凶悪犯罪の低年齢化が叫ばれる昨今、他人に歪んだ形で深くかかわることが多くなってきた現代の青少年には、非常に大切な教育であると思います(禅道会では少年部には防具を付けたポイント性の総合格闘技ルールを採用しております)

 

 また、陸盛を極めつつある総合格闘技ではありますが、その競技人口の多くは柔術やレスリングなどの組み技格闘技の経験があり、先天的に体力が優れている選手が柔術・レスリングやボクシング、キックボクシングなどの様々な技術をつぎはぎする形で取り入れ、個人のセンスによって試合に活かしているのが現状だと感じます。しかし、総合格闘技を「最も本能的な一つの格闘技」と考える空手道禅道会では、初心者が強者を目指せる稽古法を体系づけました。そしてそれはフォームや形こそ違えども、日本や東洋に脈々と流れ続けてきた武道の稽古法を応用し、現代の格闘技の形に進化させたものです。歴史を縦軸、現代を横軸と考え、(広くの格闘技を含んで)武道文化の現在の現状を顧みると、実戦格闘技として試合を行うものは現代の横軸の風潮に振り回され、個人的な才能によってのみ成り立っていると考えます。そして横軸にかつて陸盛を誇ったはずの武道や武術もまた、歴史に取り残された形で形骸化してしまっているものが多いのではないでしょうか。

 

 武道文化は「闘い」という生命として必ず持ち得る一見のエゴイスティックな本能に、道の教育性を取り入れ昇華し、生きた形で発展してきたものでした。今の武道は現代を象徴したように、縦軸の理論性を持ったものは形だけになり、流行りのものは個人が才能に任せて行っているだけのものになってしまったように思います。それは、文化の二つの面、歴史を継承していく面と現代社会に感性的な豊かさをもたらす面が分離してしまっているようにも見受けられます。これでは歴史の縦軸と横軸の中に自信を見いだせない武道家や格闘家も多いのではないでしょうか。実は、この縦の歴史の中に自信を見いだせないことが親や年長の人への尊重信の欠如につながり、現代の横軸を無視して個人の世界に生きてしまうことが引きこもり人口100万人といった、他人を自分の心に受け入れることのできない社会性の欠如につながる一つの理由なのです。

 

 さらに、文化の継承性はなくなり、体力や素養に左右されずに強さへの可能性を追求できる稽古体系が形骸化されて、格闘技が個人の才能の世界になってしまった現在では、努力の大切さを感じて目標を持ち、希望を未来に見いだすことも難しくなってきているのではないでしょうか。

 

 以上のようなことから総合格闘技を追求し、少年から青年、壮年、女性まで、広く武道として自分の可能性を追求できる稽古体系を確立することは、教育的側面から見ても最も重要なことだと確信しております。

 

 また、教育性と実践性は生きた武道を追求していくうえで必要不可欠な車の両輪ですが、そのために最も必要な事項となってくるのが安全性です。空手道禅道会の稽古体系はその点についても十分な考慮をしており、普段の稽古から試合にいたるまでの安全管理に最善を尽くしています。そして、大会や試合などは経験、体格、年齢や性別などによって幾重にも区別されており、各人の希望に応じて実力を試し、稽古にフィードバックして常に自己を顧みられるように整備してあります。

 皆様方におかれましては技術や稽古体系に限らず、この根底に流れる武道精神を感じ取って頂き、誰でも強くなれる総合格闘技の手引きとして使っていただければ幸いです。

 

私を含めた現在の禅道会の指導者クラスはもう10年以上も前から総合格闘技の稽古体系を確立し目指して活動してきました。しかし、現在の稽古体系は何百、何千年といった人類の文化の歴史の中で生まれた「武道(マーシャルアーツ)」がなければ確立し得なかったものだと思います。また、先人たちの努力に報いるためにも現在の稽古体系では満足せず、日々の研鑽を積み重ねて発展、普及させていきたいと思っております。

 

 空手道禅道会 著

「バーリトゥードKARATEBABジャパン出版  

 

首席師範 小沢 隆 のあいさつより抜粋(一部修正、加筆)